世界文化遺産の1つ沖ノ島の見どころ・楽しみ方

玄海灘に浮かぶ沖ノ島は「神の島」「海の正倉院」とも呼ばれ、今なお厳格な禁忌に守られています。2017年7月9日に「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として8つの構成資産すべてが世界遺産に登録されました。今回は沖ノ島のみどころや楽しみ方をご紹介します。

沖ノ島ってどんなところ

沖ノ島は島全体が信仰の対象で、厳しく入島を制限してきました。そのため島には上古より続く自然崇拝の祭祀の変遷の足跡が手つかずの状態で現代まで受け継がれてきました。
沖ノ島全体と三つの岩礁からなる宗像大社沖津宮は、宗像大社の一つで、三宮が一つとなって宗像三女神を祀っています。沖津宮に田心姫神、中津宮に湍津姫神、辺津宮の市杵島姫神を祀っています。

現代でも沖ノ島は、自由に立ち入ることはできません。無断で立ち入ると法令により罰せられることがあります。
奉祀は神職が行なっていますが、上陸前には必ず禊が必要で、着衣を全て脱ぎ、海に浸かって心身を清めなければ島内へ入ることはできません。
また、沖ノ島で見聞きしたことは一切口外してはならないという禁忌があります。島で見たり聞いたりしたことは人に言ってはならず、人々は沖ノ島を「おいわずさま」とも呼び、現在までその禁忌を守ってきました。
また、一木一草一石たりとも持ち出してはならないとされています。沖ノ島からは何一つ持ち出してはなりません。この禁忌ゆえに現在に至るまで、沖ノ島の古代祭祀遺跡はほぼ手つかずの状態で守られてきました。

沖ノ島へのアクセス

沖ノ島は一般人の入島は禁止されているため、訪れることはできませんが、大島の北岸に沖津宮遙拝所が設けられており、島そのものをご神体として沖ノ島に対する拝殿の役割を果たしています。この社殿から沖ノ島を遥か遠くに拝むことができます。
遙拝所がいつ作られたかは定かではありませんが、階段の手前に「寛延三年」（1750年）と刻まれた石碑があるため、少なくとも18世紀中頃までにはこの場所にあったと考えられています。現在の建物は1933年（昭和8年）年に建てられたもので、天気によっては水平線上に沖ノ島の姿を見ることができます。

沖津宮遙拝所へのアクセスは以下の通りです。

JR博多駅⇒JR福間駅/JR小倉駅⇒東郷駅～（バス約25分）～神湊波止場…神湊港～<渡船約25分>～　大島港～（バス約10分）（徒歩の場合約30分）～宗像大社沖津宮遙拝所

沖ノ島の見どころ

宗像大社中津宮

沖ノ島とともに世界遺産に登録された中津宮は大島にあります。県内でもっとも大きい島で、湍津姫神を祀っています。境内には「天の川」と呼ばれる川があり、川をはさんで牽牛社と織女社があります。8月7日に行われる七夕祭は中津宮でもっとも盛大な神事です。急な石段の先に中津宮の社殿があり、県の有形文化財に指定されています。境内にある「天真名井」は記紀神話の中でアマテラスがスサノヲの剣を三つに折って天真名井ですすぎ、宗像三女神が誕生した逸話にちなんで名づけられました。一年中湧き出ている冷水は「延命招福の霊泉」といわれ、この御神水で習字をすると書が上達すると伝わります。

宗像大社辺津宮

辺津宮も「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として世界遺産に登録されています。宗像市の釣川沿いの田島にあり、市杵島姫神を祀っています。本殿は遅くとも12世紀までに築かれたといわれていますが、たびたび戦火に遭い、1578年（天正6年）に大宮司・宗像氏貞によって再建されました。1590年（天正18年）には小早川隆景によって拝殿が再建され、その後、福岡藩主黒田氏によって修理費用が賄われ、今もその信仰は途切れることがありません。本殿と拝殿は国の重要文化財に指定されています。神宝館には三角縁神獣鏡や金製指輪、金銅製龍頭など8万点に及ぶ沖ノ島祭祀遺跡から出土した奉献品が収蔵・展示されており、全て国宝に指定されています。神宝館の入場料は大人800円、高・大学生500円、小・中学生400円、幼児は無料です。沖ノ島を体感できる3Dシアターは入館料無料です。

新原・奴山古墳群

福津市にある新原・奴山古墳群は、古代豪族宗像氏の墳墓群です。沖ノ島祭祀を行い、信仰の伝統を育んできたことから、三宮とともに「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として世界遺産に登録されました。前方後円墳5基、円墳35基、方墳1基の計41基が現存し、大型の前方後円墳（22号墳）や中型の前方後円墳（1号墳）は5世紀、中型の前方後円墳（12・24・30号墳）は6世紀前半～中頃にかけて、また小型の円墳群（34〜43号墳）は6世紀後半に築かれたと考えられています。5世紀に築かれたといわれる7号墳は宗像地域では珍しい方墳で、沖ノ島祭祀と共通する鉄斧も発見されています。古墳の形や周囲をめぐる溝などもその姿をよく留めており、往時の佇まいを今に伝えています。